読書の森〜ビジネス、自己啓発、文学、哲学、心理学などに関する本の紹介・感想など

数年前、ベストセラー「嫌われる勇気」に出会い、読書の素晴らしさに目覚めました。ビジネス、自己啓発、文学、哲学など、様々なジャンルの本の紹介・感想などを綴っていきます。マイペースで更新していきます。皆さんの本との出会いの一助になれば幸いです。

「自分の中に毒を持て」岡本太郎著<新装版>(青春出版社)

「自分の中に毒を持て」岡本太郎

自分の中に毒を持て<新装版>-20200505 | 道新ブックガイド

岡本太郎さんの「自分の中に毒を持て」は私自身が読んで衝撃を受けた一冊です。

記された一文一文から、とにかく、岡本太郎さんのエネルギーがほとばしっています。

人生を賭けて芸術と向き合った岡本太郎さんの言葉はとにかく強烈です。

岡本太郎について

岡本太郎氏は、1911年生まれの日本の芸術家で、1930年~1940年まで、

フランスで過ごし、シュルレアリスム運動にも参加しています。フランス滞在時代には美術団体アプストラクシオン・クレアシオン協会のメンバーにも加わります。思想家のバタイユとも親交がありました。

ドイツのパリ侵攻をきっかけに日本に戻り、兵役を経て、中国戦線にも出征しています。やがて、1970年に大阪万博が開催されることが決まると、有名な「太陽の塔」を作成します。1970年代以降にはテレビ番組にも多数出演し、「芸術は爆発だ」などのフレーズで人気を博しました。

 

岡本太郎さんは18歳で単身パリに渡り、25歳であえて危険な道を選んで生きる決意をしたとのことです。(本書でも記載があります。)それからというもの、当時評価されるような絵とは全く正反対の絵を描くようになったといいます。(原色をキャンパスに書きなぐるような作品を数多く残しています。)

 

ここからは、本書における岡本太郎氏の刺激的な言葉をご紹介します。

〇「自分の中に毒をもて」

~迷ったら危険な道に賭けるんだ~

人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積み減らすべきだと思う。財産も知識も蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれ、身動きがとれなくなる。(P11)

人生に挑み、ほんとうに生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれ変わって運命をひらくのだ。それには心身とも無一文、無条件でなければならない。

捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く、純粋にふくらんでくる。

今までの自分なんか蹴とばしてやる。そのつもりでちょうどいい。(P11)

安易な生き方をしたいときは、そんな自分を敵だと思って闘うんだ。たとえ、結果が思うようにいかなくったっていい。結果が悪くても、自分は筋を貫いたんだと思えば、これほど爽やかなことはない。(P14)

人間にとって成功とは一体何だろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうかではないだろうか。夢がたとえ成就しなかったとしても、精いっぱい挑戦した、それだけで爽やかだ。(P29)

ぼくはいつでも、あれかこれかという場合、自分にとってマイナスだな、危険だなと思う方を選ぶようにしている。(P31)

結果がまずくいこうがいくまいがかまわない。むしろまずくいった方が面白いと考えて、自分の運命を賭けていけば、パッとひらくじゃないか。(P33)

今日の社会では、、(中略)システムの中で安全に生活することばかりを考え、危険に体当たりして生きがいを貫こうとするのは稀である。自分を大事にしようとするから逆に生きがいを失ってしまうのだ。(P36~P37)

~一度死んだ人間になれ~

か、これと思ったら、まず、他人の目を気にしないことだ。また、他人の目だけではなく、自分の目を気にしないで、萎縮せず、ありのままに生きていければいい。(P39)

ちょっとでも情熱を感じること、惹かれることを無条件にやってみるしかない。情熱から生きがいがわき起こってくるんだ。情熱というものは「何を」なんて条件付きで出てくるもんじゃない。無条件なんだ。(P40)

マイナスの方に賭けてみるんだ。自分で駄目だろうと思うことをやってみること。それはもちろん危険だ。失敗に賭けるんだ。駄目だと思うことをやった方が情熱がわいてくる。(P61)

まったく自信がなくたっていい。なければなおのこと、死にものぐるいでぶつかっていけば、情熱や意志がわき起こってくる。(P69)

本当に生きるということは、いつも自分は未熟なんだという前提のもとに、平気で生きることだ。スポーツも歌も会話も全て下手なら、むしろ下手こといいじゃないか。もっともっと下手にやろうと決心すれば、かえって人生が面白くなるかもしれない。(P80)

ニブイ人間だけが「しあわせ」なんだ。ぼくは幸福という言葉は大嫌いだ。ぼくはその代わりに、「歓喜」という言葉を使う。危険なこと、辛いこと、つまり死と対峙し対決するとき、人間は燃え上がる。(P84)

行き詰まった方が面白い。だから、それを突破してやろうと挑むんだ。もし行き詰らないでいたら、ちっとも面白くない。(P85)

~出る釘になれ~

出る釘になれ。痛みは伴うが人生は充実する。(P112)

自由に、明朗に、あたりを気にしないで、のびのびと発言し、行動する。それは確かに難しい。苦痛だが、苦痛であればあるほど、たくましく挑み、乗り越え、自己を打ち出さなくてはならない。(P141)

〇感想など

 岡本太郎さんの文章を引用する形で一部ご紹介させていただきましたが、冒頭から非常に刺激的な言葉が並んでおり、衝撃を受けました。「人生は積み減らすべきだ」、「駄目だと思った方に賭けろ」、「マイナスへと自分を突き落とせ」、「出る釘になれ」といった岡本太郎さんの言葉は世間の常識とは真逆の方向をいっていて非常に刺激的です。

 本書を読み通すだけでも、岡本太郎さんは、自分の生命を爆発させ、燃焼させて生きた芸術家だったのだろうと、その激しい人生を窺い知ることが出来ます。「死」や辛いことに対峙したときにこそ、人間は歓喜するのだ、という岡本太郎さんの思想は強烈ですし、どこかニーチェの思想に近いものを感じます。

 ニーチェは、つらいことや楽しいことが永遠にループする=永遠回帰を肯定することこそ、究極の生の肯定であると述べていますが、岡本太郎さんの思想は、困難に直面した時こそ歓喜する、というものなので、それよりも強烈かもしれません。

 自分に岡本太郎さんと同じ生き方が出来るか、と言えば難しいかもしれませんが、「下手でもかまわない。(むしろ下手な方がいい。)情熱を感じる方向へ突き進んでいけ。」という岡本太郎さんの言葉には勇気をもらえます。

 何か挑戦したいことがあるけど勇気が出ない、という人にはとてもお勧めの本であると思います。