脳にいいことだけをやりなさい(マーシー・シャイモフ 茂木健一郎訳)知的生き方文庫
脳にいいことだけをやりなさい(マーシー・シャイモフ 茂木健一郎訳)
何気なく手にとってみた一冊ですが、とても良い本だったので、おすすめしたいと思います。タイトルからすると、脳科学の本かなと思ってしまうと思いますが、どちらかと言えば、ポジティブ心理学や幸福についての本です。(脳のメカニズムを知りたいという人が読むと、ちょっと面食らうかもしれません。)
原題はHappy for no reason(訳もなく幸せ)です。
しかし、幸福になるためには、脳に良いことを実践していく必要があると書かれていますので、若干脳科学的な事の勉強にもなると思います。
【どんな本?】
本当の幸福「お金や地位」を得ることでは得られない。日々の習慣を変えていくことが幸福につながる、ということを前提に、脳によい習慣がたくさん紹介されています。
【内容】
著者のマーシーさんはポジティブ心理学をメインに様々な場所で講演活動を行ってきた人物です。彼女が出会った人のうち、幸福な100人は7つの脳によいことを実践していたと言います。
1.ネガティブ思考の大そうじ
2.プラス思考で脳にポジティブな回路をつくる
3.何事にも「愛情表現」を忘れない。
4.全身の細胞から健康になる
5.瞑想などで脳を人智を超えた大いなる力につなげる
6.目標を持ち、脳に眠る才能を開拓する。
7.つき合う人を選んで脳にいい刺激を与える。
また、前提となる法則として、以下の3つの法則を挙げています。
①拡大の法則
エネルギーが拡大する思考・行動を選ぶ。
→背筋を張り、胸を張り、腕を広げ、大きく深呼吸する。
ー「自由」「喜び」「明るさ」「広がり」を意識する。
②支援の法則
あらゆるものが自分を援助してくれる。
人生に間違いというものはない。必ず失敗から何か学べる。苦難に陥っても、きっと誰かが、何かが自分を助けてくれる。
好きなものー磁石に吸い寄せられるように、自分に集まってくる。
ネガティブ思考をなくし、ポジティブ思考を身につけるために
ネガティブ思考をなくし、ポジティブ思考をなくすためのメソッドとして、様々なものが紹介されています。
〇自らの思い込みをなくす
たとえば、「私は~に嫌われている」という考えが浮かんできたら・・自分自身にこう問いかけてみる。
①それは真実か?
②それが真実だと言い切れるか?(根拠は?)
③それを信じているとき自分はどのように感じるか?
④それを信じなければどのような気分になるか。
客観的に分析しているうち、思考がクリアになっていき、思い込みから解放されていきます。
〇前向きになれるものを意識して探す
人間は、普段から考えているものは意識せずとも見つけることが出来るようになります。これは、脳の網様賦活系という働きによるものです。
うれしいこと、楽しいことを意識して見つけるようにすることで、意識せずとも見つけることが出来るようになります。
〇脳が喜ぶことを行う
人・もの・出来事に感謝する。
例えば、感謝の日記を毎日つけることで、幸福度は上がっていくといいます。
毎日テーマを決めるのも有効だといいます。例えば、テーマは太陽にする、水にする、などと決めることで、ネタ切れも防げるかもしれません。
心身ともに健康になるために
〇栄養
水をたくさん摂る、カフェインを減らす・・
〇深呼吸
腹式で行う。その時、「私の毎日が幸せでありますように」「世の中のすべての人も幸せでありますように」と念じる。
〇一日15分瞑想する
瞑想により前頭前野が発達するとの研究結果があります。前頭前野の働きにより、興奮や不安、恐怖の感情を生み出す脳の扁桃体の働きをある程度抑制することができるようになります。
〇情熱の傾け先を探す
時間を忘れるくらい何かに熱中していた経験はありませんか?心理学者のチクセントミハイはそのような体験のことを「フロー体験」と名付けました。
「フロー」の状態の時には余計な事は全く考えません。何かに熱中している時にはネガティブな考えはどこかへ行ってしまいます。まずはそのような自分が熱中できるものを探すことが重要だといいます。
【おわりに】
上記の他にも、脳によい習慣、実践した人の体験談なども紹介されています。「幸福論」というと抽象的な響きがありますが、本書は脳に良い習慣を実践していくことこそ幸福につながる、という明確なコンセプトがあるため、内容も具体的で実践しやすいものとなっています。
普段「何となく」ネガティブな思考に陥ってしまう人は多いのではないでしょうか。私も負の思考スパイラルに陥ってしまうことはよくあります。
先天的なパーソナリティーも多少はあるのかもしれませんが、環境によるストレスが思考をネガティブに陥らせてしまっている面は否めないと思います。
職場での人間関係や運動する機会の減少など、現代社会はストレス因子を多分に孕んでいます。
また、コロナ禍でネガティブなニュースが多く、人との接触機会が減っていることも大きく影響していると思います。
このような中、今の自分の思考がどうなっているか、心身の状態はどうなのか、など自分自身を見つめ直してみること、内なる声に耳を傾けてみることはとても大切なことだと思います。
よく、資本主義社会では、「これを買えば幸せになれる」というような広告をよく目にします。しかし、実際それを手に入れたら多くの場合、「もっと」思考に陥ります。
真の幸福は、このような、「ドーパミン的」幸福ではないとしているのが本書の立場です。本書に書かれているような習慣は消費を前提としていません。したがって、幸福になりたいけどお金はかけたくないという方には非常にお勧めです(笑)。
明日から実践してみたくなるような「脳によい事」がたくさん書かれている良書です。