読書の森〜ビジネス、自己啓発、文学、哲学、心理学などに関する本の紹介・感想など

数年前、ベストセラー「嫌われる勇気」に出会い、読書の素晴らしさに目覚めました。ビジネス、自己啓発、文学、哲学など、様々なジャンルの本の紹介・感想などを綴っていきます。マイペースで更新していきます。皆さんの本との出会いの一助になれば幸いです。

「自助論」の内容・要約 S.スマイルズ(知的生き方文庫)

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「自助論」S.スマイルズ(知的生き方文庫)竹内均 訳 ¥560(+税)

君はいま、自分の生き方を自分で決める時期にさしかかっている。

英国人の医師作家、サミュエル・スマイルズが19世紀に著した世界的な自己啓発書。原題は「セルフ・ヘルプ」で、人生を自らの手で切り拓く自助の精神を説きます。

時機を見抜く才覚、時間や金銭についての知恵、人脈術、人間の器などについて、われわれに温かいアドバイスをしています。

本書は、明治初期の教育者、中村正直によって「西国立志編」として翻訳され、多くの大志抱く青年たちに読み継がれてきた、まさに古典的名著です。

 

●自分の人生を自分で切り拓く

「天は自らを助くるものを助く」

この有名な言葉で始まる本書は世界数十ヵ国に翻訳され、明治初期の日本でも「学問のすすめ」とともに、多くの人々に読まれました。

本書を貫いている思想は「自らの運命を切り拓く事ができるのは自分以外にはいない」というものです。そうした、独立不羈の精神が本書で貫かれており、欧米で有名な偉人のエピソードとともに語られています。

 

●社会の進歩と個人

社会が進歩していくために必要なことは何か?という事について、スマイルズは「外からの支配」よりは「内からの支配」を重視します。

スマイルズは、法律や制度を変えたとしても、社会はより良い方向に変わってはいかないと説きます。

では、何が必要か??

われわれ一人一人が勤勉に働き、活力と正直な心を失わない限り、社会は進歩する(13頁)

社会を良くするのは政治や行政の仕事、とわれわれは考えがちです。しかし、スマイルズはそれは違うというのです。自助の精神、人間の自由意志の力は強い。一人一人が自助の精神を持てば、社会は自ずと変わっていく。

一方で、人間はそれほど強い存在ではないという反論もあるでしょう。

現にわれわれは、うまくいかない理由を環境のせいにしてしまいがちです。

「不景気だから…」、「お金持ちに生まれなかったから…」

もちろん、スマイルズはこれらの言い訳を否定します。厳しいです。しかし、その背景には人間への厚い信頼がある事が本書から読み取れます。スマイルズは、人生のハンドルを握っているのは常に自分であり、「君はいま、自分の生き方を自分で決める時期にさしかかっている」(108頁)と、読者に対して語りかけます。

人生のすべての行動の決定権は常に自分にある事を強く注意喚起します。

 

・人間の優劣は努力で決まる

本書の第二のテーマは「勤勉力」です。

人間の優劣は、その人がどれだけ努力してきたかで決まる。(23頁)

さらに、著名な画家の言葉を引用し、

「諸君が天性の才能に恵まれているなら、勤勉がそれを高めるだろう。もし恵まれないとしても、勤勉がそれにとって代わるだろう。(96頁)

と述べています。

本書が素晴らしいのは、「単に勤勉であれ!」と述べるのではなく、具体的な方策まで指し示しているところです。

例えば、手帳を一冊携えて、気にかかることをメモしていけば、勤勉さは自然に身につくと言っています。哲学者ベーコンや生物学者ダーウィンも、丹念に書きとめたメモから偉大な発想を生み出したのだと述べています。

 

●適切な自尊心を持ち、尊敬する人物をまねる

優れた仕事を成し遂げるためには、自尊心がなければならない。

「自尊心とは、人間が身にまとう最も貴い衣装であり、何ものにもまして精神をふるい立たせる」(214頁)

ここで適切な自尊心を持つには自分が最も尊敬する人物を真似するのがいいと著者は言います。われわれの人格は、周囲の人間の性格、態度、習慣などによって無意識のうちに形づくられるというのです。

こうなりたい人間=ロールモデルについては、歴史上の人物でも構いません。

 

●自らの長所を伸ばせ

優れた人格を獲得するためには、短所は見ずに長所を伸ばすことを著者は勧めます。

自身のなさも、人間の進歩発展にとっては大きな障害となる。(中略)自分の力に自信を持っていたからこそ成功でき」るものだからです。(207〜208頁)

また、「真の謙虚さとは自分の長所を正当に評価することであり、長所をすべて否定することとは違う」と説きます。

 

●感想など

書店に行くと自己啓発書は沢山目にします。最近はタレントやyou tuberなどの著作も数多く出版されています。批判をする訳ではありませんが、内容を見ていると、単に自分の経験を述べているだけだったり、どこかで読んだ事がある内容だったり、玉石混交なのも事実です。

そうした観点でいうと、この「自助論」は時代という篩にかけられた上で現在まで生き続けている古典であり、読んで間違いのない作品です。

一見、「言い訳をするな!自分の人生は自分で切り拓け!」という厳しい内容が書かれているかと思いきや、「自分のことを信じて前に突き進んでいけ!」と力強く読者を鼓舞してくれます。

まさに、これぞ自己啓発書中の自己啓発書。エマーソンの「自己信頼」とも並ぶ傑作だと思います。

他にも、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」、スティーブン・R・コビーの「7つの習慣」、D.カーネギー「人を動かす」など、自己啓発書の古典は多いですが、「自分に自信がもてない」という悩みを抱えている方にはこの「自助論」を勧めたいです。私自身とても勇気付けられた作品です。是非、自助の精神を身につけ、行動につなげていきたいです。